
IT系のエンジニア職は高年収のイメージを持たれることもありますが、実際には他の職種と比較して年収が高くはない人も少なくありません。
エンジニアが年収を高め、より良い待遇を得るためには、働く場所をよく選び、必要なスキルを身に着けて準備することが大切です。
この記事では、エンジニアが年収アップを実現するためのポイントや、どのような職場を選べばよいかについて解説します。
ITエンジニアで年収が低いのはこんな職種・職場

ITエンジニアで年収の低い職種
「ITエンジニア」と一言でまとめることがふさわしくないほど、IT系のエンジニア職にはさまざまな種類があります。
経済産業省の「平成29年IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」では、エンジニア職の平均年収が紹介されていますが、コンサルタント職の928.5万円が最高額です。
一方、最も年収が低いのは顧客サポート・ヘルプデスク職で、390.9万円とその差は2倍以上と大きく開いています。
このことから、ITエンジニアにおいては職種が年収に大きく影響していることは明らかです。
また、エンジニアの代表的な職種であるプログラマーやシステムエンジニア(SE)は、エンジニア職の中ではそれほど年収の高い職種ではありません。
これらの職種もどの分野で働くかで多少幅がありますが560~600万円ほどであり、コンサルタントやプロジェクトマネージャのように平均値が900万円前後の職種と比較すると見劣りします。
その他、Web系のコンテンツクリエイターやデザイナー職も同資料ではIT系の職種として扱われていますが、これらも平均年収が411万円と他エンジニア職から大きく離れています。
ITエンジニアの年収は働く会社に左右される
また、ITエンジニアが年収を高めるためには働く場所が大切です。
勤め先の規模や技術、得意分野や顧客によって、年収が大きく変わるからです。
IT系の会社は数多くありますが、下請けが中心になっている会社ではなかなか年収が伸びません。
IT業界では、大手のSIerやソフトウェアメーカーが顧客から受注し、企画や設計など上流工程をまず担当します。
そして、開発や設置・設定などの下流工程は下請けに任せるケースが多いです。
これは上流工程ほどスキルによって付加価値を高めやすく、下流工程では企業の技術差が納品物に出にくく付加価値をつけにくいからです。
情報処理推進機構の「IT人材白書2018」では、企業規模が大きくなるほどITコンサルタントなどの上流工程に携わる職種を増加させていると分析しています。
この内容からも、年収が高い職種の人は、大手企業で上流工程に関わっているという属性を持っているとの予測が可能です。
IT企業に発注する企業側の立場で考えると、規模の大きなシステムの導入にあたって、発注先の信頼性は大切な要素です。
そのため、規模の大きな案件はどうしても大企業に集中しやすくなります。
企業規模が小さいなら、受注できる案件規模や受注額も小さくなるため、企業全体の売上も小さめです。
すると、エンジニアひとりひとりの年収も伸びにくくなります。
また、エンジニアの転職では、過去に携わった案件について問われることが多いですが、見栄えのする大きな仕事を経験するという点でも、規模の小さな会社にいては不利です。

ITエンジニアが年収の低い状況から抜け出すには

ITエンジニアが年収の低い状況から抜け出すためには、社内で出世するか転職するか、もしくは独立や副業といった選択肢から選ぶ必要があります。
しかし、これらはいずれもスキルが求められますので、先のキャリアビジョンをよく考えて選ぶことが大切です。
中長期的なビジョンを持ってキャリアデザインする
エンジニア職では年収の高い職種はほとんど決まっていますし、伸びる技術分野も予測できます。
そのため、中長期的なビジョンをもって、年収の高い企業や技術分野で働ける自分を作っていくことが大切です。
自分の現在のスキルやキャリアから勤め先を考えると壁に当たってしまいますので注意しましょう。
それぞれのIT技術は互いに関連し合っているため、過去に仕事を通して身に着けてきた知識や技術がムダになることはほぼありません。
大切なことはそれをいかに次のステップに役立てるかです。
たとえば、ネットワークエンジニアやサーバーエンジニアの仕事がクラウド上のサービスによって徐々に減ってきています。
しかし、クラウド上のサービスを正しく利用し運用するためには土台になるネットワークやサーバーの設定知識が必要です。

専門性の高い技術者になる
技術分野によってもエンジニアの年収は変わります。
AIやRPA、ビッグデータ、セキュリティの分野では新卒でも高い報酬を与える企業が出て話題になりました。こうした技術分野では、専門性の高い技術者の獲得競争が起こっています。
そのため、これらの分野のエンジニアは売り手市場になっている状況です。
いずれも簡単に身につけられる分野ではありませんが、時間をかけてこうした分野のスキルを準備していくのも年収を高めるためのひとつの方法となるでしょう。
逆にWeb系のエンジニア職は案件規模が小さいケースが多く、また技術的なハードルが低いために年収が伸びにくいです。
複数の先端技術分野と組み合わせることができたり、大規模なサービスを担当できたりする企業に属さない限り、大幅な年収アップを期待するのは難しいでしょう。
逆算して必要スキルを修得しよう
急にエンジニアとしてのスキルが伸びることもなければ、上級レベルの職種に急に転職することも簡単ではありません。
自分がどの方向にキャリアを作っていきたいのかを考え、逆算して必要スキルの修得を重ねていくことが大切です。
そして、自分のスキルの成長に応じて、働く場も少しずつ変えていくことで理想のキャリアや年収に少しずつ近づいていくことができます。
年収が低いエンジニアが年収アップするための会社選び

自分の年収が低いと感じているエンジニアが年収を高めるためには、どのような会社を選べばよいか、ポイントを紹介します。
今の職場よりも大きな案件を受注している会社
年収が低い原因は、会社が受けている案件の規模や受注額が小さいことが根本的な原因であるケースが多いです。
そのため、今の職場よりも大きな案件を受注している会社を探してみると良いでしょう。
情報があれば、会社情報から年間の従業員一人あたりの売上高を調べてみることで、受注している案件の規模や技術レベルも予想できます。
先進的な技術分野に取り組んでいる会社
AIやRPA、IoTなどの新しい技術分野は、多くの企業のビジネスモデルを変化させて企業に競争力をもたらすことが期待されます。
先進的な技術分野に積極的に取り組んでいる会社で働くことによって、先端技術分野に触れる機会を得ることが可能です。
昔のガラケー用ソフトの開発のように、技術分野によっては年々需要が減っている分野もあります。
こうした分野では、メンテナンスが主な仕事になり、仕事も先細り将来性があまり期待できません。
もしも自分の所属する企業や自分のメイン技術が古い技術であれば、早めに乗り換えるための学習を始めましょう。
上流工程を担当できる会社
企業規模がたとえ小さくなったとしても、下流工程から上流工程の仕事に携わることができるようになれば年収を高めることができる可能性があります。
大きくは年収が上がらないとしても、上流工程の経験を積むことによって次の転職では実績があるためもっと給与の良い会社を選ぶことも可能です。
必要な知識やスキルを身につけるための学習は必要ですが、チャンスがあれば積極的にトライしてみると良いでしょう。
都市部の会社
一般的に地方よりも都市部の方が平均賃金が高いですが、IT系の求人情報を見ていてもその傾向は同じです。
地方でエンジニア職として働いている人は、同じレベルの仕事だとしても都市部の会社に移るだけで年収を高めることができる可能性があります。
都市には多くの企業があり、システムの企画や設計などの上流工程は都市で行われるため、IT系の大手企業の多くは都市部に本社や支社をもっています。
地方にいながらにしてリモートワークで働ける社員を募集する求人も増えています。
リモートワークならではの難しさはありますが、スキルの幅を広げ、新たな経験をする機会として考えてみても良いでしょう。